「特定技能の外国人を採用することになったが、住居はどこまで会社が負担すべきなのか」 「家賃は本人からいくらまで受け取っていいのか」──特定技能の受入を検討する企業のご担当者の方にとって、住居費用は判断に迷いやすいテーマです。

特定技能制度では、住居の確保は受入機関が行うべき支援のひとつとして位置づけられており、居室の広さや費用徴収について一定のルールがあります。本記事では、制度上のルールを整理したうえで、費用負担の考え方と概算シミュレーションを解説します。

この記事でわかること

① 特定技能における住居確保支援の位置づけ
② 1人あたり7.5㎡以上という居室基準
③ 家賃を本人から徴収する際の「実費を超えない」ルール
④ 4名入居を想定した費用シミュレーション

1. 住居確保は「義務的支援」のひとつ

1号特定技能外国人を受け入れる受入機関(特定技能所属機関)は、「1号特定技能外国人支援計画」を作成し、それに基づいた支援を行う必要があります。この支援には必ず実施しなければならない「義務的支援」があり、住居の確保に係る支援はその一つです。

支援は受入機関が自ら行うほか、登録支援機関に全部を委託することもできます。ただし委託した場合でも、支援が適切に行われているかの責任は受入機関にあります。

注意

義務的支援に要する費用は、直接・間接を問わず外国人本人に負担させてはならないとされています。一方で、住居そのものの家賃は、一定のルールのもとで本人から徴収することが認められています。この「支援費用」と「家賃」の区別が重要です。

2. 住居確保の3つの方法

運用要領では、住居確保の支援として主に以下の方法が示されています。

方法内容受入企業の負担感
① 社宅・寮の提供受入機関が自ら所有する物件、または賃借した物件を社宅として提供する手配・管理の手間は大きいが、住環境をコントロールしやすい
② 賃貸物件の情報提供+契約支援本人が賃貸借契約を結ぶ際に、物件探しに同行し、連帯保証人となる、または保証会社を利用できるよう手配する契約は本人名義。保証面の手当てが必要
③ 受入機関が賃借人となる受入機関が法人として賃借し、本人に住まわせる(いわゆる借上げ社宅)法人契約のため、本人の審査・保証の問題を回避しやすい

外国人本人が個人で賃貸契約を結ぼうとすると、入居審査や連帯保証人の確保で難航するケースが少なくありません。そのため実務では、①または③の法人主体の方法が選ばれることが多い傾向にあります。

3. 住居の基準:1人あたり7.5㎡以上

特定技能外国人の住居については、運用要領で居室の広さが1人当たり7.5㎡以上であることが求められています。ルームシェアをする場合も、居室全体の面積を入居人数で割った値が7.5㎡以上でなければなりません。

制度1人あたり居室面積の基準
特定技能(1号)7.5㎡以上(約4.6畳)
技能実習4.5㎡以上(約2.8畳)

技能実習から特定技能へ移行する従業員がいる場合、同じ寮でも人数を減らさないと基準を満たせないことがあります。たとえば居室合計22㎡の2LDKでは、技能実習なら4名が可能でも、特定技能では2名(22÷7.5≒2.9)が上限です。 技能実習の人数基準については 技能実習生は寮に何人まで住める?部屋の広さと人数の目安 で詳しく解説しています。

4. 家賃を本人から徴収する際の「実費」ルール

社宅や借上げ物件を提供し、本人から家賃(居住費)を徴収する場合、実費を超えてはならないとされています。考え方は物件の種類によって異なります。

4-1. 借上げ物件の場合

受入機関が賃借している物件の場合、「受入機関が支払う家賃(管理費・共益費を含む)÷ 入居人数」以内の額が目安です。会社が支払う額以上を徴収して利益を得ることはできません。

計算例

月額家賃12万円(共益費込)の物件に4名入居 → 1人あたり徴収できる上限は月3万円

4-2. 自己所有物件の場合

受入機関が所有する物件の場合は、建物の取得費用や建設費用を耐用年数で割った減価償却費、管理費、修繕費などから合理的に算出した額を入居人数で按分した額以内とされています。周辺相場ではなく、実際にかかっているコストが基準になる点に注意が必要です。

注意

徴収額は、雇用契約締結前や入居前に本人が理解できる言語で説明し、合意を得ておくことが必要です。徴収額の算出根拠も、後から説明できるよう記録を残しておきましょう。

5. 光熱費・共益費・初期費用の考え方

5-1. 光熱費

電気・ガス・水道などの光熱費も、実際の使用額を入居人数で按分するのが基本です。定額で徴収する場合も、実費と大きく乖離しないよう定期的に精算するなどの配慮が望まれます。

5-2. 敷金・礼金・仲介手数料などの初期費用

受入機関が賃借人となる借上げ物件では、敷金・礼金・仲介手数料などは受入機関が契約者として支払うものであり、本人への転嫁には慎重な判断が必要です。住居確保支援の費用とみなされる部分を本人に負担させることはできないため、初期費用は受入機関負担とするのが無難です。

5-3. 家具家電

家具家電を会社が用意する場合、その費用を家賃に上乗せする形で徴収してよいかも論点になります。取得費用を耐用年数で按分するなど実費の範囲に収める考え方がありますが、判断に迷う場合は所轄の出入国在留管理局や専門家に確認してください。家具家電の用意方法については 外国人従業員の社宅で家具家電を用意する4つの方法 で比較しています。

6. 給与から天引きする場合の条件

家賃や光熱費を給与から控除(天引き)する場合、労働基準法第24条の「賃金全額払いの原則」に注意が必要です。控除を行うには、事業場の過半数労働組合、または過半数代表者との書面による労使協定を締結しておく必要があります。

また、控除後の手取り額が著しく少なくなると、生活が成り立たず早期離職につながるおそれがあります。住居費を含めた手取りベースでの生活設計を採用前に確認しておくことが大切です。

7. 費用シミュレーション(4名入居の例)

関東近郊で3LDK(居室合計32㎡)の物件を借上げ、特定技能外国人4名が入居する場合の概算です。金額はあくまで目安で、地域や物件により大きく変動します。

まず面積基準の確認です。32㎡ ÷ 4名 = 8.0㎡/人 となり、7.5㎡以上の基準を満たします。

項目会社の支払額(月額)1人あたり徴収上限の目安
家賃+共益費12万円3.0万円
光熱費(実費)2.4万円程度0.6万円程度
インターネット0.5万円0.125万円
合計約14.9万円約3.7万円
初期費用(会社負担を想定)目安
敷金・礼金・仲介手数料等家賃の3〜5ヶ月分(36〜60万円)
家具家電一式30〜55万円(購入の場合)
鍵交換・清掃・火災保険等5〜10万円
POINT

本人から実費を徴収する場合、月々の家賃は会社の持ち出しがほぼゼロにできる一方、初期費用は会社負担となるのが一般的です。初年度は1棟あたり70〜120万円程度の初期投資を見込んでおくと、予算計画が立てやすくなります。

8. まとめ:説明と合意を書面に残す

特定技能の住居費用で押さえるべきポイントは、次の3つです。

  1. 住居確保は義務的支援。支援にかかる費用を本人に負担させてはならない
  2. 居室は1人あたり7.5㎡以上。技能実習の基準より広い
  3. 家賃・光熱費の徴収は実費の範囲内。事前説明と合意、天引きには労使協定が必要

費用負担のルールは「いくらまでなら取れるか」よりも、本人が納得して安心して暮らせるかという視点で設計すると、定着率の向上にもつながります。金額と算出根拠は書面にまとめ、本人が理解できる言語で説明しておきましょう。

POINT

本記事は2026年時点の一般的な制度運用に基づく解説です。制度は改正されることがあり、また2027年には技能実習制度に代わる育成就労制度の施行が予定されています。個別の判断は、出入国在留管理庁の最新の運用要領、所轄の出入国在留管理局、登録支援機関、社会保険労務士等の専門家にご確認ください。

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